なぜ日本人ばかりが年とともに歯を失うのか
80歳の日本人の平均残存歯数（残っている歯の本数）は6.8本前後というデータがあります。
対して、歯科先進国のスウェーデンを初めとする欧米では20本。何と13本もの差があります。
この差の原因は人種の差などではなく、日本人と欧米人の歯科医院に対する考え方と使い方の違いからくるものです。
日本人は痛くなったら、悪くなったら歯医者に行こう！という考え方がいまだ根強く、予防やメインテナンスの為に通っている方はまだ少数派かもしれません。この為、痛くなった時には何かしらのダメージをおっており、削ったり、場合によっては抜かなくてはならない事も。
対して欧米では、出来るだけ歯を失わない、削らないでいいように、0歳児から歯医者に通い始め、まるで美容院に通うように定期的に通院するのが当たり前という意識を持っています。この為、悪くなってしまう前に対応できるので、歯を失うリスクが下がり、結果として年をとっても日本人より多くの歯が残っているのです。

歯周病の特徴
また、他の部位の炎症との大きな違いは、一度悪くなると、私たち歯科医師や衛生士が介入して炎症を沈めてあげない限り、ずっとその状態が続いてしまいます。
そして、一度感染してしまった歯周病菌は歯と歯茎の間だけでなく、私たちの細胞内にまで入り込んでしまうため、現在の科学ではお薬やお掃除で完全に消し去ることが出来ず、悪いことを出来ない状態にして、うまく付き合っていくというのが今設定できる理想のゴールとなります。
その為にはご自身でのセルフメインテナンスと、私たち歯科医療者によるプロフェッショナルケアのどちらが欠けても成り立ちません。

歯周病と関連する病気
歯周病は意外な病気とも関連していることが判っています。
一例として、
認知症：脳血管型の認知症に2倍なりやすく、アルツハイマー型にも関与
心疾患：狭心症や、心筋梗塞のリスクが2倍上がります。
誤嚥性肺炎：肺炎は2～5倍かかりやすく、死亡原因の3位を占めています。
リウマチ：歯周病の治療で症状が軽くなることも
肥満：歯周病の毒素で肥満が進行、肥満で歯周病も進行
骨粗しょう症：骨粗しょう症を圧下させることが判っています。
早産：歯周病でリスクが7.5倍にも。煙草や飲酒より危険です。
そしていま最も関与が強いと考えられているのが糖尿病です。歯周病が悪いと糖尿病も顕著に悪化し、糖尿病の強い人は歯周病が悪化しやすいです。強い歯周病を持つ糖尿病患者は歯周病治療をするだけで糖尿病の基準となるヘモグロビンA1cの数値が1近く減少すると言われています。これを運動療法や食事療法だけで下げようとすると相当な努力が必要です。